インドネシアの宗教はなぜ2億人がイスラム教か?インドは英国が宗主国であった。非暴力で逃げられた。しかし香港はイギリスが捨てた。

パンチャシラ

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インドネシアの国章ガルーダ・パンチャシラ。神鳥ガルーダが抱える盾に描かれた5つのエンブレムは、パンチャシラの5原則を示す

パンチャシラインドネシア語: Pancasila)とは、インドネシアの国是となっている建国5原則をさす。スハルト体制期には特に、国民統合のイデオロギー、体制の正統性原理となった。インドネシアが独立を宣言した1945年8月に制定された「1945年憲法」前文にその文言が刻まれている。

概要編集

その建国5原則は現在、以下の順番で数えられている。

  1. 唯一神への信仰 (Ketuhanan Yang Maha Esa)
  2. 公正で文化的な人道主義 (Kemanusiaan Yang Adil dan Beradab)
  3. インドネシアの統一 (Persatuan Indonesia)
  4. 合議制と代議制における英知に導かれた民主主義 (Kerakyatan Yang Dipimpin oleh Hikmat Kebijaksanaan, Dalam Permusyawaratan / Perwakilan)
  5. 全インドネシア国民に対する社会的公正(Keadilan Sosial bagi seluruh Rakyat Indonesia)

1945年憲法の制定に先立って1945年6月1日、日本軍政末期に開かれた独立準備調査会で、スカルノが発表した5原則が、その前身となっている。そこでは、

  1. インドネシア民族主義 (Kebangsaan Indonesia)
  2. 国際主義ないし人道主義 (Internasionalisme)
  3. 全員一致の原則ないし民主主義 (Musyawarah Mufakat)
  4. 社会的繁栄 (Kesejahteraan Sosial)
  5. 唯一神への信仰 (KeTuhanan yang Berkebudayaan)

という順序になっている。ここで第5項に並んでいた「唯一神への信仰」が、現今のパンチャシラでは第1項に挙げられるようになっている。

人口の約9割がムスリムであるインドネシアの政体は、イスラム諸国会議機構(OIC)に加盟しているとはいえ、世俗主義である。その理由として、少数とはいえ、キリスト教徒ヒンドゥー教徒を国民として抱えていることが挙げられる。また、この原則から、無神論は容認されていない。スハルト政権下で徹底的に排除された共産主義が国是に反することを標榜している。

また、現行5原則の第3項、第4項、および旧5原則の第1項、第3項からは、地縁的・文化的紐帯を持たないまま、旧オランダ領東インドから統一国家として独立したインドネシア(という「想像の共同体」)が、国家分裂の危機を内包していたことが見える。

多種多様な民族からなる多民族国家インドネシアにおいて、各種族・各宗派・各団体がそれぞれの主張に固執すれば、国家の求心力の維持が難しくなる。スカルノが「指導される民主主義」といい、スハルトが「パンチャシラ民主主義」を主張し、自由主義や複数政党制、議会制民主主義を「西欧的」と牽制してきたのは、そうした歴史的背景がある。

インドネシアではイスラム教プロテスタントカトリックヒンドゥー教仏教儒教の6つの宗教が公認されているが、無神論は違法であり、公言をすると逮捕される可能性がある[1]

関連文献編集

  • 土屋健治 『インドネシア民族主義研究 -タマン・シスワの成立と展開-』 創文社、1982年。
  • 高橋宗生 「国民統合とパンチャシラ」 安中章夫・三平則夫編『現代インドネシアの政治と経済 -スハルト政権の30年-』 アジア経済研究所、1995年。
  • 増田与後藤乾一村井吉敬『現代インドネシアの社会と文化』現代アジア出版会、1979年。
  • Feith, Herbert and Lance Castles eds, Indonesian Political Thinkings 1945-1965,Cornell University Press, 1970
  • Adnan Buyung Nasution, The Aspiration for Constitutional Government in Indonesia : A Socio-legal Study of the Indonesian Konstituante 1956-1959, Pustaka Sinar Harapan, Jakarta, 1992

脚註編集

  1. ^ “フェイスブックで逮捕された無神論者”ニューズウィーク. (2012年3月14日)

関連項目編集

宗教と割合

インドネシア共和国憲法で認められている宗教はイスラム教、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー、仏教、儒教の6つです。

国家原則「パンチャシラ」では唯一神への信仰が定められているため、「無宗教」であることは認められていません。そのため、ほとんどすべての人がなんらかの宗教を信仰しています。

2010年のインドネシア人口統計によると、9割近くがイスラム教信者であり、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教の信者があとに続きます。

【信仰する宗教の割合】

宗教人数割合
イスラム教207,176,16287.18%
キリスト教(プロテスタント)16,528,5136.96%
キリスト教(カトリック)6,907,8732.91%
ヒンドゥー教4,012,1161.69%
仏教1,703,2540.72%
儒教117,0910.05%
その他299,6170.12%
回答なし・回答協力せず896,7000.37%
合計237,641,326100%

出典:Badan Pusat Statistik, Sensus Penduduk 2010
https://sp2010.bps.go.id/index.php/site/tabel?tid=320&wid=0

宗教にまつわる国民の祝日

インドネシアが様々な宗教の信仰を認め、多様性を尊重していることは、制定されている国民の祝日からも分かります。

【2018年の宗教関連の祝日】

イスラム教ムハンマド昇天祭(4/14)、イドゥル・フィトリ(6/15, 6/16)、
イドゥル・アドハ(8/22)、イスラーム歴1440年新年(9/11)、
ムハンマド生誕祭(11/20)
キリスト教
(プロテスタント)
キリスト受難日(3/30)、キリスト昇天祭(5/10)、
クリスマス(12/25)
キリスト教
(カトリック)
クリスマス(12/25)
ヒンドゥー教ニュピ(3/17)
仏教 ワイサック(5/29)
儒教 イムレック(2/16)

宗教伝来の歴史と各宗教の習慣

インドネシア地域は古来より、地理的に好立地であったため様々な人々が行き交っていました。オーストロネシア人の渡来に始まり、交易の時代には香辛料を求めて中東、ヨーロッパ地域からはるばる商人がやってきました。

ここではそのような人の移動と共に、どのようにして宗教が伝来したか時系列順に見ていきましょう。

アニミズム

海外からヒンドゥー教や仏教が伝来する前より、インドネシア地域の広範囲でアニミズム(精霊信仰)があったことが分かっています。

独立以降、原則として唯一神への信仰が前提となっているインドネシアではアニミズム信仰は正式には認められていませんでしたが、2007年よりインドネシア政府が非公式の宗教信仰者同士の結婚が認められる旨を発表しました。

ヒンドゥー教

ヒンドゥー教はインドより徐々にインドネシア地域へと伝わり、やがてジャワ文化と融合していきました。

ジャワ地域の有名な影絵芝居「Wayang Kulit」もヒンドゥー文化の影響を受けているものです。

他の宗教が流入した影響により、植民地時代以降、ヒンドゥー教の信者はイスラム教の影響が少ないバリ島に集中するようになりました。

現在でもバリ島全域でヒンドゥー教が信仰されており、他の島とは異なる建築物や文化を見ることができます。

また、ジョグジャカルタにある世界遺産「プランバナン寺院」もヒンドゥー教の建築物です。

仏教

ヒンドゥー教と同様に、仏教もインド文化の影響を受けてインドネシア地域に伝わりました。

シャイレーンドラ王朝、シュリ―ウィジャヤ王朝などの支配を受け、仏教はインドネシアの広範囲に浸透します。

ジャワ島中部の世界遺産「ボロブドゥール寺院」は世界最大級の仏教寺院です。

なお、現在インドネシアで仏教を信仰しているのは、主に中華系の民族であると言われています。

儒教

By Okkisafire – Own work, CC BY-SA 3.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=29215955

儒教は中国商人によりインドネシアに伝わりました。

ヒンドゥー教や仏教、イスラム教のように王朝の元で大規模な信仰が行われていたわけではありませんが、今日まで信仰が受け継がれています。

スハルト時代には儒教は国の宗教として認められておらず、政治的影響を受けた宗教の一つでしたが、民主化以降、国から認められる宗教の一つとなった、という歴史を持っています。

イスラム教

インドネシア北西部からムスリム商人がインドネシア地域へ渡来し、彼らが現地の支配階級との婚姻関係を結んでいったことでエリートクラスから庶民までイスラム教への改宗者が増えていきました。

現在ではインドネシア全域で信仰されていますが、様々な宗派があり、地域によってもイスラム教へのアプローチ方法が異なります。

ここ数年はマジョリティーを占めるムスリムの支持を得るため、イスラム教の政治利用も目立っています。

キリスト教(カトリック・プロテスタント)

キリスト教は宣教師の渡来と共にインドネシア地域へ伝来しましたが、オランダ植民地政府の関心はキリスト教を布教することよりも、本国経済を支えることにありました。

既にイスラム教の影響を深く受けている地域ではキリスト教はあまり浸透しませんでしたが、バリ島の東のエリアから東ティモール地域はカトリック、パプア地域はプロテスタントが広がっていきました。

なお、カトリックはポルトガルの支配、プロテスタントはオランダの支配による影響を受けています。

このように、複数の宗教が時代を経てインドネシアに根付き、「重層文化」が形成されました。

近年、インドネシア国内で小規模なテロや、選挙時の宗教同士の衝突について報道されていますが、何世紀にも渡りあらゆる文化や宗教を受け入れてきたインドネシアは、異なる思想や価値観を共存していける国といえるでしょう。

ビジネス上の留意点

宗教により習慣やホリデーシーズンが異なります。現地にて調査や視察をご検討される方は、インドネシアの祝日も事前に把握しておきましょう。

また、インドネシアは広大な国家であるため、地域ごとにマジョリティーとなる宗教も異なります。

インドネシアでビジネスをする際は、宗教に関わる側面や地域による特性などを事前に把握しておくことが非常に重要です。

弊社ではデスクリサーチや規制調査などの実績も多数ございますので、ご興味のある方は是非お問い合わせ下さい。

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